妊娠中にエックス線検査を受けると、お腹の胎児に影響がありますか?
通常の放射線診断における医療被ばくでは奇形や発達の遅れなどが起こることはありません。
妊娠に気づかないで放射線検査を受けた事を理由に妊娠中絶の行われることが少なくありませんが通常の放射線診断による被ばくでは胎児への影響は無視してよいものです。

「ICRP Publicalion84」より抜粋 |
胎児への放射線の影響は次のとおりです。
受胎後3週以内の胎児については奇形の心配はありません。奇形が問題になるのは第4週から第7週までで、第8週から15週ないし25週までは精神発達遅滞のリスクがあります。
国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告では奇形のしきい値は100ミリグレイ(mGy)、精神運動発達遅滞は100~200ミリグレイ(mGy)とされています。
ICRPの奇形のしきい値は国連科学委員会の科学的根拠に基づいたしきい値250ミリグレイ(mGy)の2,5分の1に当り、安全を見込んだ値になっています。1CRPでは100ミリグレイ(mGy)未満の胎児被ばくを妊娠中絶の理由にしてはならないと勧告しています。妊娠に気付かずに放射線検査を受けた英国女性50人の胎児線量を表に示します。
通常胎児被ばく線量は100ミリグレイ(mGy)を超えていません。
なお、奇形は医療被ばくを受けなくても一定の割合で自然に発生しています。一般の人が見てわかる奇形は1,000人に7人程度、医師による診療では100人に3~4人の頻度で見つかります。胎児被ばくでは、小児がんの問題もあります。ICRPでは被ばくのリスクを計算する際には発生率を厳しく見積もっています。しかしながら、小児がんの自然発生率は0.2~0.3%と低く、胎児被ばくにより個人のレベルで小児がんのリスクが増加したとしても、10ミリグレイ(mGy)の胎児被ばくをした場合でも小児がんの発生率は0.3~0.4%で低いと考えられています。
妊娠に気付かないで放射線検査を受けたことを理由に、不必要な妊娠中絶が許容され、行われている現実があります。妊娠に気付かないで放射線検査を受けた場合は、正確なデータと情報に基づいたカウンセリングが重要です。被ばくを理由とする不幸な中絶をなくしましょう。
参考資料:
「ICRP Publication 84 妊娠と医療放射線」
日本アイソトープ協会
監修:
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 原爆後障害医療研究施設 教授 奥村 寛
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 教授 林 邦昭
執筆:
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 原爆後障害医療研究施設 助教授 難波裕幸
長崎大学医学部附属病院放射線部 部長 越智 誠
|