放射線は私たちの日常生活の中で、医療以外ではどのように使われていますか?
放射線は私達の日常生活の中で医療以外でも驚くほど頻繁に使われています。
(1)工業分野
身近な例で言うと、電気を使用する機器類のほとんどに放射線が使われています。
家電類の中には無数のコードがありますが、すべてのコードはショートを防ぐために絶縁体(プラスチックの部分)で包まれています。普通のプラスチックが耐えられる温度はせいぜい100℃程度ですが、放射線照射を行えば、約300℃まで耐熱性が向上でき、このノウハウは現在家電製造工場などで使用されています。
ガラスに放射線を照射すると、たとえばナトリウムを含むものは茶色に、コバルトを含むものは紫といった具合に、不純物によってさまざまな色に変色するため、これを応用してガラス加工製品に色をつけてやることができます。
ガラスの花瓶 |

写真提供:日本原子力研究所 高崎研究所 |
さらには、コンピューターのデータを保存するフロッピィディスクの中の丸い板(磁気ディスク)に放射線を照射すると、ディスクに付着している鉄の接着性が高くなり、高品質で長寿命の製品をつくることができます。もちろんこれらの製品を購入しても、人体に影響はありません。
(2)食品分野
身近な例では、とれたじゃがいもからの発芽を防ぐために放射線照射を行っています。これは、じゃがいもの新芽に含まれる毒素が腹痛の原因になることがあるためで、日本では1972年以降、じゃがいもに対する放射線照射が行われています。
照射したジャガイモ(下)と照射しないジャガイモ(上) |

写真提供:士幌町農業共同組合士幌町アイソトープ照射センター |
日本の食品照射施設の内部 |

写真提供:士幌町農業共同組合士幌町アイソトープ照射センター |
参考資料:
日本原子力研究所ホームページ
監修:
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 原爆後障害医療研究施設 教授 奥村 寛
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 教授 林 邦昭
執筆:
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 公衆衛生学分野 助教授 高村 昇
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