今から六十年ぐらい前のことでした。日本とアメリカで戦争がおこりました。
その四年目ごろに、たいへんな事がおこりました。
それは、世界のどの国ででも使ったことのない「原子ばくだん」と言う、おそろしい物をアメリカが、「広島」と「長崎」に落としたんです。
その「ばくだん」は、とっても熱くて、人々や木や家など、いっぺんに焼いてしまったんです。この話は、おじいちゃんや、おばあちゃんに聞いたことがあるでしょう。
「ヒロシマ」におとされた「ばくだん」はたった一つだったけど、なんと「十万人以上の人」が焼け死んでしまいました。
お巡りさんも、消防団の人々も。
そこで、大活躍したのが兵隊さんでした。兵隊さんたちは、翌日から広い焼跡のあちこちに、大きなテントを張りました。そして百人ぐらいを、
・けが人を運ぶ・やけどの人の手当をする。
・死んだ人の始末・自分たちの食物づくり
と、四つに分けました。
○「ばくだん」が落ちたとき、みんな地面にふせたんです。だから頭のうら・背中・足と、
ふくらはぎが焼けてます。
○テントの中は、暑くて痛くて、みんな泣いています。中学生、女学生が多いんです。
それは、あの「ばくだん」が落ちたころ、勤労動員で工場へ向う途中だったんです。
三日目だったかな。白布で腕をつったお母さんに連れられて二年生ぐらいの女の子がきました。見ると右の耳の後ろに、(ガラスで切られた三センチメートルぐらいのーキズ)があり、中にうじむしがいっぱいいました。兵隊さんは、ひとつひとつ、ていねいに取ってあげました。その子は涙をこぼしながら、兵隊さんをじいーと見あげていました。
「あの子は、いまごろ どうしているかな」兵隊さんは、今でも時々思い出すそうです。
そのころは、とても暑い日が続きました。若い元気な兵隊さんたちも、とてもつかれてきました。そこで、夕ご飯がすむと我先にと、それぞれのね場所を見つけてねてしまいました。
テントの中は、くさくてねむれません。兵隊さんは、とてもいい所を見つけました。
そこは、タバコ工場のあとだったので、人一人が入れる木の箱が、いくつかありました。まくらはないけれど、ひざをまげてヤドカリのようにもぐりこみました。
ところが、あまりつかれると、なかなかねむれないんです。
しいんーとした空を見あげると、たくさんの星が手でつかまえられるように近く見えました。
大きな星は、おとうさんとお母さん星かな。小さく光ってるのは、子供星かな。
兵隊さんは、「なくなったみんなの『たましい』が、夜になると星になって光りだすのかなあ」と考えました。
「そうだ」「みんなが」
ーキラキラ星ーになってるんだ。
兵隊さんも、キラキラ星の仲間に入っていつの間にか眠ってしまいました。
今年九十才になった兵隊さんは、星空を見るたびに、あの時の「キラキラ星」の事を思い出すそうです。
おわり
・作者 飯島信一は、暁第二九五三部隊・第一中隊・約百二十名の一員
・場所 広島タバコ専売局跡地(治療地)
・毎日新聞募集(平成二十四年九月末締切)
小学生低学年向け・テーマ=「星」応募作品
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