それは、写真を写す時のフラッシュが一瞬に五千個いや一万個もっと多く百万個の光の渦中に―――そして、静かに時は流れた。
まるで無声映画をスロウモーションで見る一シーンのような一時でもあった。
私は、幸いな事にその瞬間には気を失っていて、光の後に来る爆風そして爆発音をまったく知らない、爆風が来る前にすでに横たわっていた。
後は修羅場である、気がつき見渡せば今まで立っていた横の建物は巨大なハンマーでたたきつけられたような状態でペチャンコ、その下からは「助けて」「痛いよ」「お母さん」「熱いよ」「兵隊さん助けて」と助けを呼ぶ声のみが弱々しく聞こえる、廻りが静かであるだけにその声は小さいけれども静寂の中では大きく聞こえる、
後は無我夢中 気が付けば帽子も草履もなく服は焼けてボロボロ疎開先にたどり着きやっと父親に会っても私の確認ができて後の事は空白で何も覚えていない。
唯、強烈に残っているのは壊れた防火槽の横に全身真っ黒に焼き爛れた子供の丸くなった死体で画を描くのが得意な私でもその光景は何回書いても書くことができない。
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