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私の被爆、私の願い 
林田 康二(はやしだ こうじ) 
性別 男性  被爆時年齢 9歳 
被爆地(被爆区分) 広島(直接被爆)  執筆年 2002年 
被爆場所 広島市南観音町[現:広島市西区] 
被爆時職業 児童 
被爆時所属 観音国民学校 
所蔵館 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館 

昨年九月十一日、テロによって亡くなられたNYの犠牲者の方々のご冥福を心よりお祈り申しあげます。

私は一九四五年八月六日、午前八時十五分、爆心地より約四キロメートルで被爆しました。九歳でした。広島市南観音町の南観音小学校の分校の二階窓際にいました。突然すさまじい閃光。学友たちは我先に廊下へ走り出ました。悲鳴と泣き声が充満しました。爆風が追うように校舎を破壊しました。私は一時気を失っていましたが、気がつくと走り出た方向とはまったく逆の方を向き、四つん這いになり、頭の上に柱が人の字に支えあった下にいました。必死で逃げました。階段も壊れていたので、ぶら下がって飛び降りました。外へ通じる廊下は窓枠が無数に重なり、砕けたガラスの破片がいっぱいでした。私は素足でしたが、無傷で残った窓枠のガラスの上を、宙を飛ぶ心地で次々と一気に走り抜けました。外へ出て避難しようとすると、防空壕の中は傷ついた人たちでいっぱいでした。

道路の上にも砕けて光るガラスの上を走り、自宅へもどると母が待っていました。母は台所の壁の内側で助かりました。母は私を背負って救護所へ走りました。私は、頭、耳、すね、膝をガラスで負傷していました。救護所には傷ついたたくさんの人々が来ていました。喉にガラスが刺さったまま、母親と一緒にそろり…そろり…と歩いている女学生がいましたが、痛々しい姿でした。私の父は三菱造船所に勤務していましたが、幸い無傷で帰宅しました。夜になると、市内一面燃えており、野火のように見えました。悲しいことに、兄だけが帰ってきませんでした。兄は十二歳で中学一年生でしたが、学徒動員によって爆心地近くの材木町で家屋の撤去作業をしていたのです。父母は兄を探しに焦土へ向かいました。小川や溝の中を歩いたと聞きました。大きな川には水を求めて亡くなった人たちの死体がいっぱいだったと聞きました。兄は見つかりませんでした。後日似島収容所へ遺体を引き取りに来るよう連絡がありました。

二日後、父母は相談して私を郷里の長崎へ避難させることにしました。母に連れられて鉄道で長崎へ向かいました。列車は途中で米軍機の空襲に遭い、数時間停車しました。そのため長崎への到着が遅れてしまい、九日の夕方になりました。長崎駅より手前の喜々津駅で列車が止められ、正午前に長崎が被爆したことを知らされました。米軍機の空襲があのときなかったら、列車は予定通り正午前に長崎駅に着いていたのです。そして、私は二重の被爆によって長崎で直爆死していたでしょう。その日の夜は、母と畠で野宿して、翌日、山から山へ歩いて父の実家にたどり着きました。父の実家で約半年静養しましたので、長崎の被爆直後の惨状は見ていません。その後、山越えして、母の実家へ移りました。親類の娘さんですが、長崎市内で被爆して頭の毛が抜け落ちたので頭に布をかぶっていました。その後、被爆の影響で二人が亡くなりました。母の実家ではみんなで山に入り、「ゲンノショウコ」という薬草を採って、陰干しして、どびんで煎じて毎日毎日飲みました。

原爆は、被爆者に対する偏見と、被爆者自身が思い描く心身の恐れなど、悪い影響を今も与えつづけています。あれから五十七年になりますが、まだ被爆が続いています。病床にある人もいます。被爆が原因の病で亡くなる人もいます。

私は切に平和を求めます。今こそ戦争を起こさない勇気が必要です。そして世界から核兵器を廃絶することによって、人々が安心して仲良く暮らせるようにしましょう。私の家の近くに玉川上水キリスト教会という民家の一部を使った小さな教会があります。その前を通るときに見るのですが、掲示板に「神は愛です」と書いてありました。私は平和を願って集う皆さんとともに、これからも手をつないで、平和の尊さを守るためにがんばる決意です。 Eternal Peace

 

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