よく晴れた朝だった。動員で材木町に行くのを見送って門の石段をおり「博ちゃん、怪我をせぬよう元気で行って来なさいね」と言った時、くるっと後を振りかえり、おしょぼの髪を円に描きにっこり笑い「エーエー」と軽い返事をして元気よくサッサッと出掛けて行ったのが最後のお別れになろうとは。ああ、忘れ得ない八月六日。
出典 『流燈 広島市女原爆追憶の記』(広島市高等女学校 広島市立舟入高等学校同窓会 平成六年・一九九四年 再製作版)四七~四七ページ
【原文中には、ジェンダー、職業、境遇、人種、民族、心身の状態などに関して、不適切な表現が使われていることがありますが、昭和三十二年(一九五七年)に書かれた貴重な資料であるため、時代背景を理解していただくという観点から、原文を尊重しそのまま掲載しています。】 |